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初花凛々
第20章 山、粧う
「凛、ほんっとにごめん!」


もう、雫は何度もこうして頭を下げている。


場所は以前、凛が新山に連れられて行ったアリスの国を模したレストラン。この日雫は凛を誘い、この店を訪れていた。
そして凛と会うや否や、謝罪の連続だ。


「そんなに謝られてもねぇ……言われた方は忘れないからね」


雫はあの日、酒のせいとはいえ口を滑らせたことを凛に謝罪した。酔っ払いの失態だと、凛もわかっている。


「ほんとにごめん……」


雫は、謝罪になかなか応じない凛に、しゅん、と下を向いた。


「……なんてね」

「え?」

「私全然気にしてないよ?」

「凛、本当?」

「うん、あ、いや。少しは気になったけど。工藤くんが私に一目惚れしてたとは!ってビックリはした」

「うん、実はそうなの。でもそれは絶対秘密って言われてたから……、圭吾にもこっぴどく怒られた」


凛はあの日、雫のお陰で自分も悪酔いしたり、気分を害したのは事実。だけどあのあと麻耶にあれやこれやと身体を弄られ、そのうちに嫌なことなんか頭からすっぽ抜けてしまったのだ。


____その目、いいな


____高嶺の花だった


むしろ凛にとっても、麻耶は手の届かない別世界に住んでいる人だった。それに、たくさんの女性を相手にしてきた麻耶にそんな風に言われて、凛はほんの少しだけど、女としての自信を手に入れた。


それになにより、麻耶の手により絶頂を味わい、そのなんとも言えない快感を覚えた凛は、あのあとも麻耶に何度もおねだりを繰り返していた。


凛と麻耶は、時間さえ合えば一緒に過ごし、互いの身体を弄りあっていた。それは数日おきの時もあれば、連夜の時もあった。




「……なんか、凛変わった気がする」

「え?」

「色気がだだ漏れしてる……」


さすが、付き合いの長い雫は凛の微細な変化にも気がつく。


凛自身では気が付いていないが、麻耶に身体を預けているうちに、凛は確実に"女"を開花させてゆく。
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