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初花凛々
第20章 山、粧う
アリスの店には、凛好みの酒はない。


だから、以前訪れた時に頂いたピーチモヒートを注文した。


運ばれてきた、桃色のあぶく。しゅわしゅわと音を立てながら、パチンと弾ける様が可愛いなと凛は思った。


「……須田くん、だっけ」

「えっ!?」


雫の口からいきなり飛び出た麻耶の名に、凛は動揺を見せる。まだ雫は何も言っていないのに。


「SEXの練習相手じゃなくて、本当の恋人ならいいのにね」

「何言ってんの!?んなわけないじゃん!無理だもん!」


凛は思わず立ち上がり、その弾みでイスが大きな音を立て後ろに倒れた。


「ちょっと!凛!うるさいよ!」

「だって雫が変なこと言うから!」


雫は凛と麻耶の関係を知る、唯一の人物。


それだけに、雫にそんなことを言われ、凛は動揺してしまった。


「……どうなの?彼」


雫は声を潜め、そっと凛に問いかけてきた。


「どうって……」

「もう、エッチはしたの?」

「んなっ、してないから!しない約束なの!!」


再び大声をあげた凛に、雫はもう呆れて笑った。
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