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初花凛々
第1章 紫陽花の刻
「……雨かぁ」
その日、胡桃沢 凛(くるみざわ りん)は、絶えず降り続ける雨を、老舗和菓子店"勿忘草"の窓からぼうっと眺めていた。
「お待たせいたしました」
勿忘草の店内の一角には、イートスペースが設けられている。そこで毎月最後の金曜日の夜に、甘くて上品な和菓子を味わうのが、凛の楽しみだった。
「今月は紫陽花をイメージした和菓子なんですよ」
勿忘草はお菓子を作る職人さんと、ウェイトレスの二人がいる。ウェイトレスの椎葉さんは、職人さんの娘。毎月訪れる凛は常連な為、店を訪れた際には、その月の新作和菓子を用意してくれている。
新作、と言っても凛が訪れるのは月の最後。けれど椎葉は凛のために、和菓子を必ずとっておいてくれる。
「…素敵な色です。食べるのが勿体ないくらい…」
凛は目の前に運ばれてきた和菓子を見つめ、その美しい色合いに思わずため息が漏れた。
白色、薄紫色、水色が合わさったコントラスト。それは和菓子の域を超えて、自然の景色のようだと凛は思った。
甘い和菓子とともに、静岡産の緑茶と、椎葉さんのお母様が漬けたという沢庵も頂いた。
凛はそれを上品に口に運び、シトシトと降る雨を眺めながら味わった。
_____すごく美味しい。
凛は清楚な振る舞いをしているが、中身は……
_____あぁ、美味しいけど量が少ない。今日は実家から届いたぬか漬けを出そう…
ただの食いしん坊であった。
その日、胡桃沢 凛(くるみざわ りん)は、絶えず降り続ける雨を、老舗和菓子店"勿忘草"の窓からぼうっと眺めていた。
「お待たせいたしました」
勿忘草の店内の一角には、イートスペースが設けられている。そこで毎月最後の金曜日の夜に、甘くて上品な和菓子を味わうのが、凛の楽しみだった。
「今月は紫陽花をイメージした和菓子なんですよ」
勿忘草はお菓子を作る職人さんと、ウェイトレスの二人がいる。ウェイトレスの椎葉さんは、職人さんの娘。毎月訪れる凛は常連な為、店を訪れた際には、その月の新作和菓子を用意してくれている。
新作、と言っても凛が訪れるのは月の最後。けれど椎葉は凛のために、和菓子を必ずとっておいてくれる。
「…素敵な色です。食べるのが勿体ないくらい…」
凛は目の前に運ばれてきた和菓子を見つめ、その美しい色合いに思わずため息が漏れた。
白色、薄紫色、水色が合わさったコントラスト。それは和菓子の域を超えて、自然の景色のようだと凛は思った。
甘い和菓子とともに、静岡産の緑茶と、椎葉さんのお母様が漬けたという沢庵も頂いた。
凛はそれを上品に口に運び、シトシトと降る雨を眺めながら味わった。
_____すごく美味しい。
凛は清楚な振る舞いをしているが、中身は……
_____あぁ、美味しいけど量が少ない。今日は実家から届いたぬか漬けを出そう…
ただの食いしん坊であった。