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初花凛々
第23章 紅葉狩り
日差しは秋の光を届けてくれる。


どこか寂しげな秋の空を見上げ、もう冬は近い_____と、凛は思った。






研修旅行の日。


空港では、温泉なんか、と文句を言っていた若手女性社員達もキャイキャイと楽しそうな声をあげていた。


____そんな浮かれた空気の中、凛は一人、沈んでいた。


「くるちゃん先輩!もう覚悟決めなくちゃダメですよ!」


今日も元気いっぱいの新山は、うな垂れる凛に腕を回しくっついてきた。ふわりと甘い香が凛の鼻をくすぐった。


「……無理だもん。私帰りたい……」

「もうっ!往生際が悪いなぁー」

「だって、だって!」


別に旅行が嫌なわけではない。むしろ旅行自体は楽しみだった凛。けれどなぜこんなにも凛がごねているのかというと____


「こんな重い機械が、なんで空飛ぶの!?」

「……それは私にもわかりませんが、きっと大丈夫ですよ」

「いや、信じられない」


そう、凛は飛行機が大の苦手なのだ。


昔一度、高校の修学旅行で飛行機を利用したことがある。その時は最悪だった。乱気流に巻き込まれ、墜落こそ免れたものの、飛行機は左右上下に大きく揺さぶられた。
それによって凛は、大きな恐怖を植え付けられたのだ。


「……おまえ原始人かよ」


背後から声がして、振り返ると失笑した麻耶が立っていた。


「なによっ!じゃあ麻耶は飛行機好きなの!?」

「好きってわけではないけど。出張で頻繁に飛行機乗るし」


それを聞き凛は、自分は営業は絶対無理だなと思った。


「ほら行くぞ。人事だけ点呼報告がないって部長半ギレしてる」

「えっ!嘘どうしよう!」

「俺代わりに点呼しといたから。報告は凛が行ってよ」

「きゃーやだ!ありがとう!」


凛は部長の元へ駆け出し、その後ろ姿を見ながら、麻耶と新山は顔を見合わせ笑った。
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