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初花凛々
第25章 天つ乙女
もう空が白みを帯びてきて、夜明けが近いことを教えてくれているが、凛と麻耶は時間を惜しむように口付けを交わした。


うとうとと眠りかけをしては目を覚まし、互いの存在を温度で確かめた。


凛は恋い焦がれた少女のように、麻耶の唇に魅了され何度もその唇を求めた。


長いような、短いような、秋の夜が明ける_____












「くるちゃん先輩〜」


新山を起こさないようそーっと部屋に戻るが、既に起きていた。


「須田さんのところにいたんですか?」


昨晩のことをなんて言い訳しようか散々考えていた凛だったけれど、新山があっけらかんと聞いてくるので、動揺しつつもそうだと返事をした。


「に、新山さんはどうしてたの?」

「すぐに部屋に戻って寝ましたよ。くるちゃん先輩がいるかなと思ったのにいなくってビックリしました」

「あれ?野村さんといたのかと思ってた」


凛はうっかり口を滑らせた。


「どうしてそれを知ってるんですか!?」


新山もまた、驚いた。


凛は墓穴を掘ってしまった。


新山が野村と消えたということは、小松から聞いたという事をたった今思い出した。


「野村さんとは旅館の中庭をちょっとお散歩して。酔いを覚ましただけですよ」

「そうなんだ……」

「それで?くるちゃん先輩は、どうしてそんなに顔が赤いのですか?」

「えっ!?あ、赤いっ!?」


新山はカマをかけただけ。けれど凛のあたふたとした様子は、何かありましたと言っているようなものだ。


「……何かありました?」

「な、ないですよ!?」

「ふぅん?」


新山にしてみれば、何かあったも同然な凛を見てすぐに悟ったが、あえて今は聞かないことにした。


凛もまだ、口に出来るほど頭も心も整理がついていなかった。


何か足元がふわふわと浮いているような、全身をゆるい風が包んでいるような、不思議な感覚を凛は感じていたから。
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