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初花凛々
第27章 小春日和
麻耶の泊まるホテルまで来た。
部屋に入ると、今更ながら自己嫌悪に陥る。
「何してるんだろう、私……」
「いいから早く風呂入れよ。風邪ひくぞ」
「……でも」
「どうせなら天然温泉楽しめば?」
麻耶は雨に濡れた凛のことをいち早く温めてやりたかった。
何があったかなんて、凛の気持ちを知っている麻耶には容易く想像がついている。
時刻は23時。既にホテル内の温泉には人の気配がなかった。
湯けむりの向こうに人はいるのかと思ったが、やはり浴場には凛一人しかいなかった。
_____なんだかこんな場面、怪奇話でありそう
凛はいきなり怖くなって、早々と済ませた。
シャンプーも何も持ち合わせていない凛。それは実家で済ませる予定だったから。
温泉の備え付けのシャンプーで髪を洗ったら、ギシギシと軋む。
ボディソープもなんだか薬臭くて、凛は気が滅入った。
「早いじゃん。ちゃんと温まったの?」
凛から10分遅れて、麻耶が現れた。
「なんか落ち着かなくて_____って、麻耶いい匂い!」
麻耶からは、普段凛の愛用している林檎のシャンプーの香りがした。
「この間買ったやつ。持ってきたから」
「女子並みにこだわってるね」
「風呂くらいリラックスしたいじゃん」
そう、出張先で気を使い、ホテルで寝るのはすごく疲れるというのを麻耶は知っている。だから、せめて香りだけはリラックスしようということ。
「……疲れてるのに、なんか……ごめんね」
「いいよ。シングルで二人で寝るのは慣れてるし」
麻耶と凛は普段から、互いの部屋に泊まる時にはひとつのベッドで眠りを共にした。
シングルベッドは狭くて寝返りすら打てないが、麻耶の腕の中で眠る安心感は何にも変えられないほどのリラックスを得られる、と凛は思っていた。
父親とも、母親ともこうして寝たことはない。
早くから一人で眠ることを強いられていた凛にとって、それは贅沢で至福の時とも思える。
部屋に入ると、今更ながら自己嫌悪に陥る。
「何してるんだろう、私……」
「いいから早く風呂入れよ。風邪ひくぞ」
「……でも」
「どうせなら天然温泉楽しめば?」
麻耶は雨に濡れた凛のことをいち早く温めてやりたかった。
何があったかなんて、凛の気持ちを知っている麻耶には容易く想像がついている。
時刻は23時。既にホテル内の温泉には人の気配がなかった。
湯けむりの向こうに人はいるのかと思ったが、やはり浴場には凛一人しかいなかった。
_____なんだかこんな場面、怪奇話でありそう
凛はいきなり怖くなって、早々と済ませた。
シャンプーも何も持ち合わせていない凛。それは実家で済ませる予定だったから。
温泉の備え付けのシャンプーで髪を洗ったら、ギシギシと軋む。
ボディソープもなんだか薬臭くて、凛は気が滅入った。
「早いじゃん。ちゃんと温まったの?」
凛から10分遅れて、麻耶が現れた。
「なんか落ち着かなくて_____って、麻耶いい匂い!」
麻耶からは、普段凛の愛用している林檎のシャンプーの香りがした。
「この間買ったやつ。持ってきたから」
「女子並みにこだわってるね」
「風呂くらいリラックスしたいじゃん」
そう、出張先で気を使い、ホテルで寝るのはすごく疲れるというのを麻耶は知っている。だから、せめて香りだけはリラックスしようということ。
「……疲れてるのに、なんか……ごめんね」
「いいよ。シングルで二人で寝るのは慣れてるし」
麻耶と凛は普段から、互いの部屋に泊まる時にはひとつのベッドで眠りを共にした。
シングルベッドは狭くて寝返りすら打てないが、麻耶の腕の中で眠る安心感は何にも変えられないほどのリラックスを得られる、と凛は思っていた。
父親とも、母親ともこうして寝たことはない。
早くから一人で眠ることを強いられていた凛にとって、それは贅沢で至福の時とも思える。