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初花凛々
第29章 山茶花咲いて
気付けば、時は既に師走。


凛達の仕事も忙しさのピークの真っ只中にあった。


そんな最中、凛は合間を見ては溜息を吐いていた。


忙しいといっても、凛と麻耶は連夜のように時間を共に過ごしていた。逆に忙しいからこそ、会っていたともいえる。


仕事が終わればそれぞれ帰宅し、そして和みの湯へ出向き、そのあとはどちらかの家で夕飯を作り、食べて、呑んで。


それだけ聞くと今までどおり、とも思えるが、凛は確実にその変化に違和感を感じていたのだ。


二人でいる、その時間の過ごし方について、凛は悶々として、無意識に溜息を吐いていた。


「乾杯〜」

「あ、乾杯」


今日もお揃いの薩摩切子で、互いの労をねぎらい乾杯をする。


麻耶はいつものように穏やかに微笑み、美味そうに焼酎を味わっている。






「……また、朝が来た……」


凛は朝日が昇る気配をカーテンの隙間から感じとる。


うっすらと明るくなる外は、朝が告げたことを凛に知らせてくれている。


ここしばらく_____、と言っても、もういつからかはわからないが、凛と麻耶はSEXの練習とやらをしていない。


乳房に触れることも無ければ、ショーツを撫でることも無く。


それは社内研修のあとから、ということはわかっているが、綿密には何時と言われても凛にはもうわからない。


わからないほど自然に、二人はその行為をしなくなっていた。


何も触れ合わないまま、何度こうして何もない朝を迎えたのだろう。

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