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初花凛々
第29章 山茶花咲いて
_____そういえば、あの牡蠣事件のあたりからかもしれない


凛は推理探偵のように、あれこれと憶測を立てたりもした。


_____もしかして、家族に挨拶なんかさせて、麻耶怒ってる!?


そう考えたこともあったけど、どうやらそれは違うらしかった。


何故違うと思うのか、それは。






「……凛、目瞑ってよ」

「あっ、ごめん!」


麻耶に言われ、凛はぎゅううと目を瞑る。


すると視覚は全て奪われて、全身の感覚は一点に集中する。


_____そう、唇に。


凛と麻耶は、互いの身体を弄らなくなった。けれどもその代わりとでも言うのだろうか、口付けの時間には、以前の何倍もの時間を要した。


いきなり始まる口付けの時間。それは家のみならず、二人きりならばいつでも、どこでも。時間も場所も選ばない。



給湯室で、麻耶とバッタリ居合わせた時。食材の買い出しに行ったその帰り道、信号待ちの時にも。それにアパートはすぐ目の前なのに、車中でされたこともあった。


正直、凛はSEXの練習がなくて寂しさや不安も覚えた。けれどもそれ以上に増えた口付けの時間により、凛はその事について麻耶に聞く必要もないかな、と思っていた。


麻耶に身体を弄られるのは気持ち良い。


だけど口付けされるのも、それに負けないくらい気持ちが良いことを、凛は知っているから。

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