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初花凛々
第30章 愛の戯れ
麻耶は無言のまま、赤ちゃんのように抱いていた森伊蔵をテーブルの上へ置いた。


良い子だから、大人しくここで待っていて。とでも言うように。


凛もまた、無言で麻耶を見つめていた。


その瞳から、顔色から何かを伺おうと思ったが、やはりそれは無理だった。


何も汲み取れない。


麻耶は立ち尽くす凛の側に立ち、そして。


_____あ。


凛は頭の中で、間抜けな声を出した。


麻耶は凛の唇に、そっと唇を合わせた。


「……ん」


ため息にも似た声が、凛の口から漏れる。


やはり麻耶の唇には、何か仕込まれている。


凛はそう確信した。


頭の芯がクラクラしてくるような、身体の中心を切ない何かが駆け巡る。


凛は涙さえ浮かびそうなほど、麻耶の唇の温度が愛しくて。


麻耶は凛を抱きしめ、何度も凛を愛してくれたその舌で、今日も。


甘美な味と刺激を与えてくれた。


「……凛」


キスとキスの合間に、麻耶は囁く。


その距離は僅か、1cmさえも無い。


麻耶は何度も、凛の名前を口にした。


その度に凛はまるで、麻耶から"好きだよ"と伝えられているようだと思った。


そう聞けばまるで自惚れているようだけれど、凛は麻耶と同じ時を過ごし、確かに感じていた。


友情なのか、なんなのか、本心はわからないけれど。


麻耶と過ごしていると、凛は確かに感じていたのだ。


麻耶の愛情というものを。


それはもしかしたら麻耶にとって、親友に対するそれなのかもしれない。


それでもいいと凛は思った。


麻耶が自分のことを、嫌いではないのなら、いい。


凛が麻耶に対するそれは、親友として、人として。


そして、男としても。


間違いなく好きだと、凛は思った。


初めてのキスも、SEXも。


全て麻耶がいい。


そう思った訳は、簡単なこと。


凛は麻耶が好きだから。


ただ、それだけのこと。

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