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初花凛々
第30章 愛の戯れ
コーヒーを飲んでいたら、麻耶が急に笑い出した。


「どうしたの?」

「職場でさ。もう二年前になんのかな。営業と人事のフロアが一緒になって、すぐの頃。俺、初めて凛が淹れたコーヒー飲んだ」

「二年前?」

「そう。あ、胡桃沢さんの淹れたやつか、って思って。当時の俺はワクワクしながらそれを」


思い出話を始めた麻耶を、凛は少し照れながら聞いた。


まだ互いが互いを認め合っていないときの話は、なんだか気恥ずかしくて、面白い。


「そうしたらそれ、なんか砂糖と塩間違えたとかで」

「あぁー、たまに私やっちゃうんだよね」

「俺、ひとくち飲んだところで、想像と現実の味のギャップにビビってさ。思わず凛のこと見たわけ」


麻耶は思い出を辿り、懐かしむように凛を見つめた。


「そうしたら目が合って」

「そういえば、見たかもしれない。なんかどよめいてたから、なんだろって」

「あの時の凛の顔、忘れらんない」

「なに?」

「ガタガタ言わないで飲みなさいよ!この外道が!という目で俺を」

「思ってないから」


凛は可笑しくて、声をあげて笑った。


「飲み干したよ、頑張って」

「無理しなくても良かったのに。確かあの時みんな残してたし」

「いや、無理する必要があった」


次に麻耶はどんな言葉を持ってくるんだろう?営業だけに、職業柄麻耶は人を惹きつける話し方をするな、と凛は思いながら、期待した。


「もう一杯お願いしますって、話しかけたかったから。みんな残してる時に、おかわりすれば印象に残るかな、って」


凛は期待も通り越し、驚いた。まさかあのときのあの場面で、麻耶はそう思っていたなんて想像すらしていなかったから。


「なのに凛ってばさ。おかわりする俺よりも、西嶋の方ばっか見てんの。あいつ残してんのによー」

「なんか恥ずかしい…」

「……だからさ、こうして凛と一緒に朝飯食って、コーヒー飲んで。なんだか夢みたいだ」


目の前にいる麻耶は、照れくさそうで。でも、嬉しそうに見えて。


凛はまだ、麻耶とスタートを切ったのかはわからなかった。


けれども、幸せなのは間違いないと思った。


こんなに幸せな今日が、明日も、明後日も。


来週も。ひと月先も。


ずっと続けばいいな、と。思わずにはいられなかった。

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