この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
初花凛々
第31章 花笑み

「どっか行く?」

「え?」

「明日から、仕事だし。決起のために」


麻耶は訳のわからない事を並べる凛の背中を押して、出かけるよう促した。


凛は勿忘草で食べた菓子のように、膝丈の白いニットワンピースを着た。そしてその上に、先ほど見た夕暮れよりももっと紅い色のカーディガンを羽織った。


「凛の髪、触ってもいい?」

「う、うん」


麻耶は凛の髪を、そっと櫛で梳かしてゆく。


「男子の永遠の憧れ、ポニーテール。プライベート向けに少し緩めに、可愛く仕上げます」


などと言いながら、麻耶は凛の髪をひとつに束ねた。それも編み込みも交えて。


「なにー!?麻耶ってこんな事も出来るの!?」

「妹が小さい頃、よく結わされてたから」

「すごい!」


今日は麻耶の器用さをふたつも知れたことに、凛は嬉しくなった。


「可愛い〜うちの凛ちゃん」


仕上げに、蝶の形をした金色のピンで留めて完成。その完成度の高さに、凛の気分も自然に上がってゆく。



「どこ行くの?」


凛はルンルンと弾む息を抑えながら、隣を歩く麻耶の横顔を眺めた。


さっきまでの憂鬱なんかどこへ行ってしまったのか、冬の空はそんな凛を見て笑うように雪を降らせた。


「凛、知ってる?雪がこうして舞う速さと、桜が舞い散る速さって同じなんだって」

「知らなかった」


チラチラと、空から雪はゆっくりと舞い降りる。


地面に着くと同時に、じわりと消える。


「消えちゃうけど、だからこそ綺麗なのかもね。桜もそう。散ってしまうから____ 」


凛は言いかけて、止まった。


それはまるで今の私たちみたいだと、凛はまた卑屈な方へと考えを巡らせてしまった。


この時間も、雪のように消えてしまうの____?






「でも心にはいつまでも残るよ」

「え?」

「目に見えるものだけが全てじゃない」


凛はハッとする。


いつもとんでもない方向へ飛んで行く凛の思考を、こうして麻耶は引っ張ってくれる。


こんな考え方もあるのかと、凛は目から鱗だった。


「うん。そうだよね」


凛は思い直す。


この、チラチラ舞う雪も。


一瞬で消えたとしてもそれは幻ではないのだ、と。


凛は微笑んだ。花のような笑顔で。
/452ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ