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初花凛々
第31章 花笑み
休暇も残すところ、あと1日となった。
その日凛は、今まで体感したことのないような得体の知れない寂しさのようなものに襲われていた。
____今日で、終わる。
なんとなく、そんな不吉な予感さえして、凛は朝からソワソワしっ放しだった。
一方の麻耶は、凛の部屋にある猫型クッションを抱えながら、これどこに売ってるの?とか、手触りが段々こなれてきた、だとか。
呑気にそんな事を言っている。
「凛、そろそろ座れば」
「うん。でも、色々とやっておきたいから」
凛はシンク周りや、換気扇。目につくところ全てを掃除した。
「さすが洗剤メーカー勤めなだけありますね」
「麻耶もじゃん」
「でも、なぜか自社のやつって使わないよね」
「そうなの。私これドラッグストアで安売りしてたやつ」
二人は笑いあいながら、今日も仲良く掃除をする。
「ここも外せるんだよ」
「えっ、知らなかった」
「洗剤売り込むとき、実演しなきゃな時もあるんだよ」
「そうなんだ!何が一番大変?」
「そりゃやっぱりガスコンロ周りかなー。いきなりキッチン連れてかれて、ここをピカピカにしてみせて、って言われたりする」
「ひぃ!それは大変」
「だろ。牡蠣食ったり掃除したり、バラエティに富んでるんすよ」
普段社内で黙々と働いている凛。
社員の勤務体制の管理や、保険のこと。時には新卒向けの案内を送付したりと、派手ではない地味な仕事だ。
表に出る営業は皆華やかで、楽しそうだとさえ思っていたが。
麻耶と親しくなるうちに知ってゆく営業部の仕事内容には、尊敬しかないと思った。
そして凛は麻耶のおかげもあって、隅々まで磨いた。
それこそ、心ゆくままに。
「えっ!」
「ん?」
「もう夕方じゃん!!」
凛は驚いた。窓から見える空は茜色に染まり、既に陽が傾きかけていた。
「麻耶どうしよう!」
「え、なにが?」
「なんという事でしょう……」
二人で過ごせる最後の日を、掃除だけで終わらせてしまったなんて。凛は悲しくて、やり切れない気持ちになった。
その日凛は、今まで体感したことのないような得体の知れない寂しさのようなものに襲われていた。
____今日で、終わる。
なんとなく、そんな不吉な予感さえして、凛は朝からソワソワしっ放しだった。
一方の麻耶は、凛の部屋にある猫型クッションを抱えながら、これどこに売ってるの?とか、手触りが段々こなれてきた、だとか。
呑気にそんな事を言っている。
「凛、そろそろ座れば」
「うん。でも、色々とやっておきたいから」
凛はシンク周りや、換気扇。目につくところ全てを掃除した。
「さすが洗剤メーカー勤めなだけありますね」
「麻耶もじゃん」
「でも、なぜか自社のやつって使わないよね」
「そうなの。私これドラッグストアで安売りしてたやつ」
二人は笑いあいながら、今日も仲良く掃除をする。
「ここも外せるんだよ」
「えっ、知らなかった」
「洗剤売り込むとき、実演しなきゃな時もあるんだよ」
「そうなんだ!何が一番大変?」
「そりゃやっぱりガスコンロ周りかなー。いきなりキッチン連れてかれて、ここをピカピカにしてみせて、って言われたりする」
「ひぃ!それは大変」
「だろ。牡蠣食ったり掃除したり、バラエティに富んでるんすよ」
普段社内で黙々と働いている凛。
社員の勤務体制の管理や、保険のこと。時には新卒向けの案内を送付したりと、派手ではない地味な仕事だ。
表に出る営業は皆華やかで、楽しそうだとさえ思っていたが。
麻耶と親しくなるうちに知ってゆく営業部の仕事内容には、尊敬しかないと思った。
そして凛は麻耶のおかげもあって、隅々まで磨いた。
それこそ、心ゆくままに。
「えっ!」
「ん?」
「もう夕方じゃん!!」
凛は驚いた。窓から見える空は茜色に染まり、既に陽が傾きかけていた。
「麻耶どうしよう!」
「え、なにが?」
「なんという事でしょう……」
二人で過ごせる最後の日を、掃除だけで終わらせてしまったなんて。凛は悲しくて、やり切れない気持ちになった。