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初花凛々
第34章 時雨心地
「麻耶はいい奴だよ。選んで正解」
瀬名の口から出たのは、凛の予想を大幅に裏切るものだった。
凛はきっと、ポカンと口を開けたままだったと思う。
「麻耶は昔から、本当いい奴で。俺は高校から仲良くなったけど、知ってる奴の中で一番性格もいいし。きっと幸せにしてくれる……っていうか、今、幸せでしょ?」
凛は段々、喉の奥の方がギュウッと潰されたように苦しくなって、急いで唾を飲み込んだ。
けれどもやはり、苦しい。
もう、ダメだ。
そう思った瞬間目の前がぼやけ、つうっと、涙が一粒頬を伝い
ぽたりと、膝の上に落ちた。
「……凛?」
隣にいる麻耶はこの時も、凛の心中を読めずにいた。
いきなり流れた凛の涙に困惑した。
「嬉しい……」
「え?」
「麻耶の良いところ、ちゃんとわかってくれてる人がいて……嬉しい」
凛は、周囲の抱く麻耶のイメージと、実際目の前にいる麻耶とのギャップに深く傷ついていた。
_____この男は止めときなよ
_____須田は胡桃沢さんの手には負えないよ
そう言われるほど、酷い人間だとは到底思えない
こんなにも優しくて、温かい人が、なぜそんな風に言われなくてはならないのかと……
凛は、苦しかったのだ。
「私が麻耶の良いところ知ってるから、いいんだって思ってたけど……」
悪口を聞くのはもう嫌だった。
「麻耶の良いところ、拡声器使って叫びたい」
そんな凛の言葉に瀬名は吹き出して笑った。
瀬名の口から出たのは、凛の予想を大幅に裏切るものだった。
凛はきっと、ポカンと口を開けたままだったと思う。
「麻耶は昔から、本当いい奴で。俺は高校から仲良くなったけど、知ってる奴の中で一番性格もいいし。きっと幸せにしてくれる……っていうか、今、幸せでしょ?」
凛は段々、喉の奥の方がギュウッと潰されたように苦しくなって、急いで唾を飲み込んだ。
けれどもやはり、苦しい。
もう、ダメだ。
そう思った瞬間目の前がぼやけ、つうっと、涙が一粒頬を伝い
ぽたりと、膝の上に落ちた。
「……凛?」
隣にいる麻耶はこの時も、凛の心中を読めずにいた。
いきなり流れた凛の涙に困惑した。
「嬉しい……」
「え?」
「麻耶の良いところ、ちゃんとわかってくれてる人がいて……嬉しい」
凛は、周囲の抱く麻耶のイメージと、実際目の前にいる麻耶とのギャップに深く傷ついていた。
_____この男は止めときなよ
_____須田は胡桃沢さんの手には負えないよ
そう言われるほど、酷い人間だとは到底思えない
こんなにも優しくて、温かい人が、なぜそんな風に言われなくてはならないのかと……
凛は、苦しかったのだ。
「私が麻耶の良いところ知ってるから、いいんだって思ってたけど……」
悪口を聞くのはもう嫌だった。
「麻耶の良いところ、拡声器使って叫びたい」
そんな凛の言葉に瀬名は吹き出して笑った。