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初花凛々
第34章 時雨心地
中へ入り、凛は買ってきた酒を冷蔵庫に詰めてから、缶ビールを人数分テーブルの上へグラスと共に運んだ。


そして乾杯をして、早速質疑応答が始まった。


と言っても、凛が聞く隙も与えないほど、新山は必死になって答弁を振るっている。


「私は、須田さんの妹さんと同じ部活だったんです」


麻耶の妹は、2つ下だと以前麻耶から聞いていた。凛と同い年だと新山は言った。


「それでですね。よく、彩芽(あやめ)先輩の家に……あっ!彩芽先輩は須田さんの妹さんです」

「麻耶の妹さん、彩芽さんていうんだ。綺麗なお名前」

「そうなんですよ!名前もですが、見た目にも美しい方で。そして性格も」

「……妹のことはいいから、説明進めたら」


麻耶のツッコミに、新山は苦笑いをして。そして話を進めた。


「そこで、よく遊びに行ってたら、ある日突然遭遇してしまって」

「え!それって一目惚れってやつ!もうっ、麻耶ってば!やるぅ」


一人盛り上がる凛に、麻耶は「俺じゃなくて」と強く否定する。


「……そうなんです。私は、須田さんの友人として遊びに来ていた瀬名さんに一目惚れを……!」


今度は新山が盛り上がる。過去を思い出し顔を紅く染めた。


「……あの手この手を使いましたが、瀬名さんは全く相手にしてくれず」

「そうなの……」

「それで、その時も須田さんが相談に乗ってくれて」


新山は、俯いていた顔をパッと上げて、麻耶を見た。


「頑張れよって、いつも応援してくれて……会う機会とかも、ご用意してくれたんです」


そこで凛は、ふと思う。


麻耶は、凛に対してもそうだったな、と。


西嶋に恋していたあの頃。


応援するからと背中を押してくれて


自信を持つよう励まされて。


何度も何度も、助けてくれたこと。


「……まぁ奈々の話はどうでもいんだけどさ」


黙りこくっていた瀬名が突然、口を開く。


「凛ちゃん、だっけ」

「は、はい」


瀬名は真剣な眼差しで凛を見つめた。


一体何を言われるのか。


凛は身構えた。


いつものあの台詞を言われるのだろうか。


それならば、何を言われたって凛は揺るがない。


例え、この男は止めておけと言われても。


止めるつもりなんか、凛には更々無い。
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