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初花凛々
第37章 雪消月
こんな時、ドラマだったら


涙を流しながら新山を説得して、引き止めて、励まして。


感動の復帰、となるのかもしれないけれど。


「現実はそんな簡単じゃないんだよっ」


凛は音をさせて、ビールの入ったジョッキをテーブルに置いた。


「まぁ、そうだよね」


あのあと、凛は麻耶と居酒屋に来た。


今日飲んだら、ヤバイ気がすると言っていた凛の手を麻耶が引いて。


「あーもうー」


凛は訳のわからない悶々とした思いでいっぱいだった。どうにもしてあげられないという歯痒さと、無力さで。


こんなに苛々した凛は初めて見たな、と麻耶は思った。


アルコールを一口摂取するたびに、それに比例して涙は溜まってゆくのだろうか。


凛はジョッキを三杯ほど飲み干したところで、急に涙が溢れそうになった。


「どした。吐きたい?」

「ううん……」


俯いて、黙り込む凛。


けれど俯いたのは失敗だった。


上を向くべきだった。


俯いた途端、涙がじわりと浮かび


膝にぼつ、ぽつと、痕を残した。


「……あれしようか、送別会」

「え……?」

「わたあめが向こう帰るの、一週間先だし。遊園地でも連れてって、キャーキャー騒ぐってどうよ。わたあめは確か、絶叫系好きだったはず」


あぁでも、凛は絶叫系乗れないかもなぁなんて、麻耶が言う。

「乗ります。それで新山さんが笑ってくれるなら」

「うん。俺らも笑って、見送ってやろう」


そう、凛も麻耶も、新山と瀬名のことをただ見守る他ない。


もう子どもじゃない。2人が決めた道を、ただ。


凛は本当は、絶叫系なんて乗れない。


飛行機よりも、もっともっと苦手。


けれど新山が笑ってくれるのなら。


ドラマの世界のように、ヒロインを救うだなんて大それたことは出来ないけれど。











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