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初花凛々
第37章 雪消月
「凛」


新山の家を出た所で、麻耶がいた。


知らないうちに降っていた冬の雨は、まるで新山の気持ちを表しているようだった。


「また会社戻る?」

「今日は……いい」


とてもじゃないが、会社に戻る気にはなれなかった。


「聞いた?」

「……瀬名さんのこと?」


麻耶は頷き、小さく溜息を吐いた。


「新山さん……、地元に帰るって言ってた」

「らしいね」

「4月から、瀬名さんがこっちに来るからって、新山さん喜んでたのにね……」


瀬名は4月から、栄転としてこちらに越してくるという話だった。


だから、今までより会えると、新山は喜んでいた。


その時の笑顔を思い出し、凛はまた、どうしようもない胸の痛みを覚えた。


「……私、新山さんの気持ちをわかってあげられない」


凛は思う。まだ恋愛の世界に足を踏み入れたばかりの自分は、新山の痛みを理解してあげられない、と。


もし、自分がその痛みを知っていたのなら。


その痛みを分かち合えるのに。


「……でも、悲しい顔、してるよ」


麻耶は凛の頬を指で、撫でた。


もし、この優しい手を失ったのならば。


凛は想像する。


それは想像も及ばないほど、苦しくて。


今新山が抱えている傷みはこれと同じなのか。


それとも、それ以上なのか。


凛はわからなかった。
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