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初花凛々
第39章 春告げ鳥が啼く
そして、新たな命が芽吹く春。


_____を、目前に控えたその日。


凛は人事担当として、企業説明会に参加し、社へ戻る。


それから報告書を纏め、部長に提出を済ませたのは21時を回った頃。


その時間になると、凛のいるフロアにはもう凛以外の人はいない。


いつも賑やかな場所が、夜になり人の気配がなくなるとなんだか不気味。


閉園後の遊園地もこんな感じなのだろうか、と凛は思いながら。


バッグを手に、席を立った。


「胡桃沢さん」

「ぎゃーっ!」


誰もいないはずのオフィスで、声をかけられて。


仰天した凛は、あられもない声をあげた。


「西嶋さんじゃないですか」


振り向いたら西嶋がいた。あぁビックリしたと、凛はまだ速い鼓動を感じていた。


「返事まだ?」

「へ、返事?」


いきなり何事かと。突拍子も無い問いかけに、凛は頭を捻る。


しかも、この台詞に、このシチュエーション。まるでドラマや漫画のようだと凛は思った。


西嶋が凛に愛の告白をして、曖昧に返事を濁した凛に答えを求める西嶋。と、凛はあらぬ事を妄想する。


「ほら。みんなでコテージ行かない?って前聞いたじゃん」

「あぁ、そのことなら……って、それ話したのもう3ヶ月以上前ですよ?」

「うん。あの時の話、まだ宙ぶらりんなんだよ。胡桃沢さんと須田が来てくれなきゃ、永遠にまとまらない」


_____私たち2人のせいで?


凛は責任の念に苛まれた。
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