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初花凛々
第39章 春告げ鳥が啼く
「行くって返事しちゃったの?」

「……うん」


凛は会社を出て、その足で麻耶の家へと向かった。


そう、凛はうっかり、西嶋の誘いにイエスと返答してしまったのだ。


「だってなんだか困ってる風に見えたから……」


西嶋は、頼むから来てくれと凛に言ってきた。みんな楽しみにしているから、絶対に来てくれ、と。


「私はあくまでもついでだと思うの。たぶん、麻耶がいなきゃ西嶋さんが寂しいんじゃないかなって」


そんな訳あるか、と、麻耶は呆れた声で呟いた。


「ひとを疑うことを知らない凛だから、仕方ないか」

「どういう意味?」

「別に」

「麻耶行くよね?」

「凛が返事しちゃったから行くしかないじゃん」

「そうだよね、ごめんね?」


これってわざと?それとも天然?きっと後者だと思いながら、上目遣いで、甘えたような声で謝る凛には逆らえない麻耶。


「凛もドタキャン禁止だから」


と言って、必ず来るよう釘を刺される。


「麻耶もね」


この時、凛は麻耶と一緒ならば、コテージへ泊りがけで出かけるのは楽しみ、だなんて浮かれていた。


仕事も忙しく、麻耶とどこかへ出かけるなんて久しぶりだし。


それに新山のあの件以来、なんとなく気分が沈んでいたから。



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