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初花凛々
第42章 桜色の川で
4月
桜の蕾が膨れて色づき、花弁をふんだんに咲かせる頃
凛の会社では入社式が行われる。
入社式には新入社員だけでなく、全社員が参加するのだ。
グループ会社間での人事異動もあるので、顔見せという意味合いもある。
今日も凛は、麻耶に教えてもらったオフィスレディに人気のゆるふわまとめ髪なるもので出社した。
けれど春特有の強風に煽られて、会社に着いた頃にはゆるふわどころか激しめ爆発頭に。
エントランスを抜けて、オフィスゲート周辺ではまだパスに不慣れな新入社員たちが列を成していた。
凛は手櫛で一生懸命髪を撫でながら、その列に並んだ。
「あっ」
ふと後ろから、焦ったようなそんな声が聞こえて、凛は振り向いた。
「あのっ、これ、落ちましたよ」
後ろに並んでいたのは、これまた新入社員だろうか。
真新しいオフィスパスを首からぶら下げていた。
「ありがとうございます」
その人は、凛の髪から落ちたヘアピンを拾って手渡してくれた。
桜の模様が入っているそれは、ここぞという時に身につけるようにしている。以前麻耶がくれた、桃色のパワーストーンのブレスレットと組み合わせて。
麻耶が、雪と桜の舞うスピードの話をしてからというもの、凛は桜の小物がなんとなく好きになった。
雪も、桜も。すぐに消えてしまう一瞬のものだけれど。
心に焼付くほど、目にする度に美しいと思うから。
桜の蕾が膨れて色づき、花弁をふんだんに咲かせる頃
凛の会社では入社式が行われる。
入社式には新入社員だけでなく、全社員が参加するのだ。
グループ会社間での人事異動もあるので、顔見せという意味合いもある。
今日も凛は、麻耶に教えてもらったオフィスレディに人気のゆるふわまとめ髪なるもので出社した。
けれど春特有の強風に煽られて、会社に着いた頃にはゆるふわどころか激しめ爆発頭に。
エントランスを抜けて、オフィスゲート周辺ではまだパスに不慣れな新入社員たちが列を成していた。
凛は手櫛で一生懸命髪を撫でながら、その列に並んだ。
「あっ」
ふと後ろから、焦ったようなそんな声が聞こえて、凛は振り向いた。
「あのっ、これ、落ちましたよ」
後ろに並んでいたのは、これまた新入社員だろうか。
真新しいオフィスパスを首からぶら下げていた。
「ありがとうございます」
その人は、凛の髪から落ちたヘアピンを拾って手渡してくれた。
桜の模様が入っているそれは、ここぞという時に身につけるようにしている。以前麻耶がくれた、桃色のパワーストーンのブレスレットと組み合わせて。
麻耶が、雪と桜の舞うスピードの話をしてからというもの、凛は桜の小物がなんとなく好きになった。
雪も、桜も。すぐに消えてしまう一瞬のものだけれど。
心に焼付くほど、目にする度に美しいと思うから。