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初花凛々
第44章 月前の星
凛はそこをどうされると気持ちが良いのかを知っている。


もちろん麻耶も。


知っていてあえて麻耶はそこを避けるようにした。


腰部分を頼りない紐で繋がれた場所をそっと解くと、もう隠すものは何もなくなった。


床に落ちたそれ。内側は既に、水で濡らしたかのようになっているのを凛はその目で見た。


舌が入れられて、普段は扉のように閉じられている場所をこじ開けてゆく。


「まだ、お風呂に入ってない……!」


凛は再び抵抗する。


けれども抵抗すればするほど、左脚を持ち上げる麻耶の手に力が入れられ、更に広げさせられる。


いつもよりもねっとりと、下から上に舐め上げられ、凛は悲鳴にも似た声をあげてしまった。




部屋の窓から見える海は何色だったか、と凛は思い出そうと必死だ。


どうにか別のことを考えなければもう、おかしくなってしまいそうだった。


____白、確か白んでいたはず____


南の海は青く透明と言われるが、北のそれは白く見えた。


波は穏やかだが、しかし凛の耳に届くのは絶え間なく押し寄せる潮騒。


凛はそこで変化に気付く。


こみ上げてくる"何か"


絶頂とはまた違う。


____これは、これは何____


「麻耶っねぇっ!」


凛は麻耶の頭を掴んだ。柔らかい髪を指に感じ、更にこみ上げてくるそれは____


「ダメっ、ダメなの!」


普段は控えめに喘ぐ凛だが、今日は違う。


必死な、大きな声が出てしまう。


麻耶は凛の膣に指を挿れ、内側へと角度をつけた。


凛は叫んだ。


悲鳴にも似たような、ではなく。


それは悲鳴だった。






















「潮ってやつ」

「……潮?」


凛は麻耶の口内に、こみ上げてくる"何か"を放出してしまった。


麻耶はそれを受け止めると、潮、と言った。


「でもあんまし気持ち良くはなかったでしょ」

「うーん、いつもの感覚とは違うけど、でも」


____気持ち良かったよ。


凛は小さく呟いた。それも、ものすごく照れ臭そうに、頬を紅く火照らせながら。


____今すぐひとつになりたい


麻耶は再び凛を抱きすくめようとした、その時。


部屋の入り口がノックされた。
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