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初花凛々
第8章 青嵐
窓から差し込む夏の陽。


それが余りにも暑くて、凛は目を覚ました。


隣で寝ていた須田も同じく、「暑い」と言いながら起きた。


「くるちゃんて子どもみたいだね」


そのせいで、たっぷりと寝汗をかいてしまった凛のことを、須田が笑い飛ばした。


「シャワー浴びてくる…」

「そうしな」


着替えを余分に持ってきてよかったと、凛は思った。


ザバザバと頭のてっぺんから熱めのシャワーを浴びた。


昨夜、寝る直前に見た光景が、凛の頭にふと浮かぶ。


_____初めて見た、男女の行為。


それはとても淫靡で、官能的で……。月明かりに照らされ光る椿の蜜にまみれた部分。


そして、本能のまま紡ぎだされる嬌声も_____


とても綺麗だったと、凛は思った。


_____私はあんな風に、綺麗に啼けない気がする……


西嶋の男の部分を刺激する椿は、同じ女とは思えないほど魅力的に凛の目には映った。


「風呂長い。死んでるかと思うじゃん」

「ごめん」

「水飲め」


須田は凛に、冷えたミネラルウォーターを手渡した。


「……ありがとう」

「コーヒー牛乳じゃなくて残念だけど、それで我慢ね」

「なっ!それは秘密だから!!」


つい声が大きくなる凛。


その声を聞きつけて、「おまえら朝早いな」と、まだ半分くらいしか目が開いていない西嶋がやってきた。


_____西嶋さん、髭が生えてる……


また、プライベートを垣間見た凛。以前なら、こんな西嶋の姿にいちいちときめいていた。けれど、今は。


_____西嶋さんがこんなに眠そうなのは、昨日、椿さんと_____


どうしても、あの光景が頭を過ってしまう。


「胡桃沢さん、よく眠れた?」


せっかく西嶋が話しかけてくれたというのに。凛は、今まで以上に口籠る。


「……私、朝食の準備するので……」


一言残して、凛はその場をあとにした。




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