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初花凛々
第8章 青嵐
別荘のキッチンで、凛は一人ため息を吐く。


_____こんなんじゃ、ダメ……。変に思われちゃう。


けれども離れないあの光景に、凛はふるふると頭を振った。










朝食の時間になり、椿と悠介も目を覚ました。


昨日西嶋と交わっていた椿からは、どことなく女の色気が隠しきれずに溢れているようだと凛は思った。






「ねぇー、見て。本日の水着!」


朝食の後片付けをしていたら、椿が水着を着て現れた。


その姿に、凛は釘付けとなる。


_____ああいうの、西嶋好きっぽい。


凛は驚いた。須田が教えてくれたような水着を、椿が着ていたから。


柄はゼブラではなく、ヒョウだったけれど。首の後ろと、腰骨の部分は細い紐で結ばれているだけのその水着は、とてつもなく色っぽいものだった。


椿のそんな姿に、目を奪われているのは凛だけではない。


悠介も、そして西嶋も。椿から、目を逸らせないでいた。








「俺ら今日は海行けねーわ」


さぁこれから海という時に、須田がいきなりそんなことを言い出した。


「俺らって、胡桃沢さんも?」

「うん」


西嶋の問いかけに、須田はそう答えた。


凛の意思はなにひとつ反映されないまま、凛の帰宅が決まったらしい。


「ほら、加藤が担当してたやつ。あれ今代わりに胡桃沢さんがやってくれてて。その打ち合わせが急遽決まったんだよ」


須田は西嶋にそんな説明をしていた。そんなことちっとも知らなかった凛は、驚きつつも須田に従った。


「あの商材、須田くんも担当してたんだね」

「そう。まぁ俺はただ局と話つけただけなんだけどさ」


と、詳細までリアルに語った須田。


けれど車に乗り込み、二人きりになった途端_____


「というのは真っ赤な嘘」

「え!?」


凛はいきなり、どんでん返しをされた。


「あいつらは勝手にやらせとけばいい」


須田はボソッと呟く。


「俺らは俺らで楽しもう。ここらへんにプール遊園地があったはず」


須田は慣れた手つきで、カーナビを操作する。


そんな、凛の意思を丸無視した須田の一方的な提案だが、凛はホッとしていた。





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