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初花凛々
第8章 青嵐
優しく、それでいてしっかりと回された、腕。


凛はその手を見ているだけで、顔が火照り、それから目を逸らした。


「……凛」

「えぇ、私は凛です……」

「……いい名前だって、思ってた。…ずっと。呼んでもいい?凛って」


その問いかけに、凛はこくんと小さく頷く。それを見た須田は、やった、と呟き笑う。


須田の息が、凛の白いうなじにかかる。


その度に凛はビクッと肩が跳ねそうになった。




「俺のことも、名前で呼んでよ」

「……麻耶?」

「声が小さい。もっかい」

「麻耶……!」


凛は須田の名を口にする。求められるがまま、素直に、何度でも。


その度に須田の手は、より強く、凛を抱きしめるように。


「……もしかして、ドキドキしてる?」

「当たり前でしょ……こんな事、された事ないんだから……」

「そっか」


麻耶はフッと笑うと、凛を抱きしめる腕に力を込めた。


「ねぇ、麻耶……」

「ん?」


凛はその名を口にする度、羞恥に襲われる。そんな凛を麻耶は笑い、「凛」と呼んだ。


今にも口付けでも交わしそうな距離で、声で。


何度も凛の名を呼んだ。




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