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初花凛々
第8章 青嵐
「……彼女と来てるから」
凛の聞き間違いでなければ、須田はその女性にそう告げた。
____彼女
自分とは無関係のその言葉に、凛は呆気にとられた。
誘いを断るための文句だとわかっていても。この胸の動悸は。
「凛!」
須田は続けて、その名を呼んだ。
須田に声をかけた女性は、ご丁寧に下から上まで、舐め回すように凛を見た。
____あんたが彼女?
____私の方が、いい女
そう言わんばかりの目線で。
「あっち行こ」
須田は凛の手を引き、その場から離れた。
____男の人と手を繋いだのは、これで3回目____
繋がれた手を見て、凛はそんなことを思った。
「ねぇ……あの人まだこっち見てるよ……」
いくらか離れた場所から、先ほど須田に声をかけた女性が凛達のことを遠目に眺めていた。
その女性はグループで来ていたらしく、数人でこちらを見ている。
「なんだあの女って言われてるよ絶対……」
「そんなこと言うわけないじゃん」
「ううん……」
凛は知っていた。
学校で、部活で、会社で。凛の陰口を叩く存在がいるということ。
____経験も何もない私のことを、きっと馬鹿にしている____
一度心に住み着いた疑心はなかなか晴れない。凛は俯いてしまった。
そんな凛の心中を悟った須田は、更に強く、凛の手を握った。
「ちょっと休憩しよ。おなかも休めなくちゃ」
そう言って、プールサイドの椅子に座るよう凛を促した。
凛も黙ってそれに従う____はずだったが。
「えっ、ちょっ!」
凛は動揺した。
「おとなしくしとけ」
「は、はい……」
須田は先ず自分が椅子に座り、その脚の間に収まるよう、凛を座らせた。
後ろからおなかに回された須田の腕。
明らかに自分のものとは造りからして違うその男の手を見て、凛の心臓はバクバクと音を立てた。
凛の聞き間違いでなければ、須田はその女性にそう告げた。
____彼女
自分とは無関係のその言葉に、凛は呆気にとられた。
誘いを断るための文句だとわかっていても。この胸の動悸は。
「凛!」
須田は続けて、その名を呼んだ。
須田に声をかけた女性は、ご丁寧に下から上まで、舐め回すように凛を見た。
____あんたが彼女?
____私の方が、いい女
そう言わんばかりの目線で。
「あっち行こ」
須田は凛の手を引き、その場から離れた。
____男の人と手を繋いだのは、これで3回目____
繋がれた手を見て、凛はそんなことを思った。
「ねぇ……あの人まだこっち見てるよ……」
いくらか離れた場所から、先ほど須田に声をかけた女性が凛達のことを遠目に眺めていた。
その女性はグループで来ていたらしく、数人でこちらを見ている。
「なんだあの女って言われてるよ絶対……」
「そんなこと言うわけないじゃん」
「ううん……」
凛は知っていた。
学校で、部活で、会社で。凛の陰口を叩く存在がいるということ。
____経験も何もない私のことを、きっと馬鹿にしている____
一度心に住み着いた疑心はなかなか晴れない。凛は俯いてしまった。
そんな凛の心中を悟った須田は、更に強く、凛の手を握った。
「ちょっと休憩しよ。おなかも休めなくちゃ」
そう言って、プールサイドの椅子に座るよう凛を促した。
凛も黙ってそれに従う____はずだったが。
「えっ、ちょっ!」
凛は動揺した。
「おとなしくしとけ」
「は、はい……」
須田は先ず自分が椅子に座り、その脚の間に収まるよう、凛を座らせた。
後ろからおなかに回された須田の腕。
明らかに自分のものとは造りからして違うその男の手を見て、凛の心臓はバクバクと音を立てた。