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初花凛々
第10章 雲の峰
新山が連れて行ってくれたその店には、凛の好む焼酎も焼き鳥もなかったけれど。


「おいしいですね、先輩!」


ニコニコと微笑む新山を見て、凛は胸がいっぱいになった。


_____あんたに興味がないんだ


_____雫が好きなんだよね






「……くるちゃん先輩……?」

「……ごめんっ……」


凛は溢れる涙を止めることが出来なかった。


「こんな場所なのに……ごめん」


そんな凛を見て、新山もまた目に涙を浮かべる。


「ううん、いいんですよ」


新山は持っていたハンカチを、どうぞと凛に差し出した。


凛は受け取り、ぎゅっと握りしめた。


それは新山のあだ名にふさわしい、甘くて優しい香りがした。


その香りは凛の涙を更に溢れさせた。


「……わたあめ」

「え?」

「わたあめの匂いがするよ……」



_____ねぇ、麻耶


私は本当は自分で思うよりも、ずっと幸せだと思う。


なのにどうして、こんなにも苦しいの_____







凛は、テーブルに突っ伏すようにしてワンワン泣いた。






ここは不思議の国の入り口。


ウサギさんに案内されて、ここまで来たの_____



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