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はじめの一歩
第1章 Butterfly
「彼、ウチの取引先の萬栄堂さん。宝飾品の会社の次期社長さんだよ。みんな仲良くなっといて損はないからよろしくね」
辻本さんの調子のいい紹介に、周りのホステスさんたちがざわめき、そこから一気に待遇が変わる。
どこに行っても「社長」と「宝石」という言葉は女性にとって特別な印象を与えるらしい。
数人の名刺を渡される。
隣に座った彼女の名刺には『蘭』とあった。
周りのホステスさんたちが、紹介前と後で明らかに態度を変えたのは判ったが、彼女だけは、終始同じ笑顔で態度を変えなかった。
それが逆に、気になった。
こんな客商売なのに、見え透いた媚びは売らないのか。
もちろんツンケンしているわけではない。
中にはプライドを履き違えて、安いオンナじゃない、と気取るホステスもいるが、そうではなく、物腰も柔らかいし、会話も弾む。
ただ、自分の話はしない。
あまりこういう店に来ない僕が言うのもなんだが、彼女はプロだ。そう思った。
それから、僕は彼女のことが気になり、その店に通うようになった。
辻本さんの調子のいい紹介に、周りのホステスさんたちがざわめき、そこから一気に待遇が変わる。
どこに行っても「社長」と「宝石」という言葉は女性にとって特別な印象を与えるらしい。
数人の名刺を渡される。
隣に座った彼女の名刺には『蘭』とあった。
周りのホステスさんたちが、紹介前と後で明らかに態度を変えたのは判ったが、彼女だけは、終始同じ笑顔で態度を変えなかった。
それが逆に、気になった。
こんな客商売なのに、見え透いた媚びは売らないのか。
もちろんツンケンしているわけではない。
中にはプライドを履き違えて、安いオンナじゃない、と気取るホステスもいるが、そうではなく、物腰も柔らかいし、会話も弾む。
ただ、自分の話はしない。
あまりこういう店に来ない僕が言うのもなんだが、彼女はプロだ。そう思った。
それから、僕は彼女のことが気になり、その店に通うようになった。