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はじめの一歩
第3章 夫婦のカタチ
今月の排卵予定日に、珍しく出張が入って泊まりで東京に行かなければならなくなり、俺は正直ホッとしたのだが、エミの機嫌は最悪だった。

「貴弘くん、その日って絶対動かないの?」

「仕方ないだろ仕事なんだから!」

「私が頑張って基礎体温とかつけてるの知ってるくせに、なんで協力してくれないのよ?」

「排卵日排卵日って五月蝿いよ!タマゴでもなんでも一人で産めよ!」

イライラが限界に達した俺は、思わず叫んでしまって。
大きく見開かれたエミの目から、一筋の涙がこぼれた。

ーーー言い過ぎた、と思ったが時すでに遅し。

俺が避ける間も無く、エミの平手が頰に炸裂した。しかも、ヒットした瞬間に手首を旋回させて爪を立て、引っ掻き上げるというオマケ付き。…コークスクリュービンタ。エミの最強技だった。

どんな、デカいネコ飼ってんだ、てくらいの派手な引っ掻きキズを作って出勤する羽目になった。
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