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他人の妻、親友の夫
第6章 超える一線
そんなことを思い出している内に妻と理依が出てくる。

「あ、海晴だけ狡いっ!!」

熱い湯に浸かった志歩も理依もほんのりと肌が薄桃色に色付いていた。
濡れた髪は纏めて留めている。

「お待たせしちゃいまして……」

理依が小さく会釈すると石鹸の香りがふわりと漂い鼻腔を擽った。

「いえ……湯冷ましに丁度良かったですから……」

動揺を悟られまいと視線を宵闇の通りへと流す。
街灯の少ない町だと土産物屋の灯りも煌々と輝いて見える。
その中に秋彦の姿があり、海晴は思わず身を竦ませた。
その視線は鋭く冷静に観察するようであり、先ほどの彼の願いをもう一度念押しするようにも見えた。

インテリの優男にしか思えなかった秋彦が、今や不気味な魔物にすら感じられていた。
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