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他人の妻、親友の夫
第10章 自分の妻、自分の夫
夫婦の間は夫婦にしか、分からない。
端から見て順風満帆に見える夫婦も、世間という視線を閉ざした家の中では様々な問題を抱えている。
この二人に流れる苦悩など、つい先日まで志步は何も知らないでいた。

「謝ってっ! 海晴っ! 二人に謝ってっ!」

そんなことをしても意味がないことは、志步にだって分かっていた。
それでも何もなかったようにしてしまいたかった。
小さな頃に祖父が大切にしていた壺を割ってしまったときと同じように、混乱し、興奮していた。

「どうですか? 興奮できましたか?」

しかし海晴は謝らずに秋彦にそう問い掛ける。

「奥さんが感じるところを視て、興奮するんでしょ? 俺にはそんな趣味ないけど」

安っぽい挑発だが、彼の憤りは伝わった。
妻同士が知り合いでなければ接点などないであろう二人の男が、視線を交える。
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