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よくある恋愛モノ 〜おあずけ〜
第7章 さようなら
柔らかい笑顔
まるで、あの頃に戻ったよう−−−
「ゆかりさんだってやらかしたじゃないですか。
ほら、培養しすぎてシャーレの蓋が……」
「やぁね、あれはあなたが間違って私のシャーレに液を入れたんでしょ」
二人は声をたてて笑った
「色々あったわね……」
ふと、ゆかりが窓の外に目を向けて言う
「……」
ゆかりが黙った理由はよく分かっていた
彼女が培養に失敗した、二人が付き合い始めたのはその直後
口には出せない思い出
ならば、何故−−−
「ゆかりさん、どうして……」
「失礼します」
「あっ、はい」
デザートが運ばれ、二人の間に置かれる
店員の説明が終わる頃には再び沈黙に戻ってしまっていた
「私ね、院をやめるの」
ゆかりの告白に、陸はフォークを取り落としそうになった
「やめるって……そんな急に」
「親がね、いい加減就職しないなら結婚しなさいって。この前お見合いをしたわ。
年末に実家に帰ったら、そのまま戻らないつもりよ」
なんと声をかけたら良いのだろう
“おめでとうございます?”
違う
「あなたには……似合いませんよ」
「あら、何が? 大丈夫よ、旦那の他に相手になるような男性はいない。ド田舎だもの」
「そういうことではなく!」