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よくある恋愛モノ 〜おあずけ〜
第8章 オレもキミが好きってことだよ



ところが実のところ、凪もほとんど貰っていなかった

当人が断るということもあるが、彼に直接話しかけることのできる女子などそうはいない

大抵は匿名で下駄箱や机の中に入れていたが、それも今朝の様な結果に終わるのだ

そして一つ下のフロア、一年の教室にも勇気を振り絞って渡さんとしている女子がいた



“大丈夫大丈夫……できるできるできる……”



彼女は普段かなり行動力のあるタイプなのだが、よほど好きな相手なのだろう、なかなか渡せない様子



「斎藤くん、これあげる!

これじゃ上から過ぎるか……

斎藤くん、これ受け取って!

ぅー…なんか違う……」



念入りにシュミレーションを重ねる

その時、廊下で待つ彼女の目の前を斎藤くんが通り過ぎた



「あっ、さ…いとうくん!」



斎藤くんは自分が呼ばれたのかはたまた伊藤という別人を呼んだのかと困った顔をしつつもとりあえずは振り向いてくれる



「オレ?」

「う、うん……」



女の子は小さく頷くと、思い切って彼にチョコを差し出した



「……」



が、あれだけ練習した肝心の台詞が出てこない



「これって…もしかしなくても……チョコ?」



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