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よくある恋愛モノ 〜おあずけ〜
第4章 素晴らしかったわ
陽菜乃は魔法の言葉を使うが、兄の機嫌は治らない
「浴衣は絶対に着ないからな」
“あの動きにくさは耐えられないからな”
凪は去年下駄で足がもつれたことをはっきり覚えていた
「そんなー」
更に説得を重ねようとすると、
「僕も行きたくないなぁ……」
妹たちに言ったのか、独り言なのか、陸がため息をついた
「陸にぃまで! 今年はゆかりさんも来るんだよ!」
陽菜乃はそう言ったが、陸が陸らしからぬ理由はそこなのだ
“あの人がなんの理由もなく来るわけがない”
そしてその“理由”というのは男としか考えられない
自分か凪か、それはわからないが。
「……もう約束したからねっ」
乗り気でない兄二人に妹は拗ねて出ていってしまった
そして迎えた、浴衣祭り当日
“結局断れなかったな”
陽菜乃に着付けてもらいながら、陸は浮かない顔をしている
凪が浴衣を着ることを頑として承諾しなかったので、今年は陸の番だった
「去年ひどかったからねー」
対する陽菜乃はおおはしゃぎで、出かける一時間も前に全ての用意を終わらせていた