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よくある恋愛モノ 〜おあずけ〜
第6章 そして甘い口づけを
ゆかりは陽菜乃の腕を掴み返し、少しずつ力を込めていく
「……離して下さい」
「貴女に指図されたくないわ」
何故かゆかりは本気で怒っていた
「痛い……」
「何も知らない……子供のくせにっ」
ゆかりの爪が手に食い込み、陽菜乃は痛みに顔を歪める
「いたっ!」
「俺の妹に何してんだ」
次にゆかりの腕を掴んでいたのは凪だった
「……めんどくさいのが来たわね」
「お兄ちゃん!?」
ゆかりは深く息を吸って落ち着くと、
「もう何もしないわ。放してちょうだい」
凪は意外とあっさりと手を放す
「戻るぞ」
凪に連れられ陽菜乃も席を立った
“私は……何をむきになってるのかしら”
ゆかりは口のつけられかった紅茶を引き寄せ、水面に写る自分の顔を見つめていた−−−
カッカッ
「お兄ちゃん、もっとゆっくり歩いて……手、痛いよ……」
そこで初めて、凪は思わず妹の手を引いていることに気がついた
だがその手を離すことなく引き寄せると、
「何のつもりだ」
陽菜乃の目を見つめ、静かに怒る
それは、妹を本気で心配する兄の姿だった