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 その腕で壊して 
第1章  
 私は、私が私でなくなる瞬間が好きだ。
 その瞬間だけは、誰か別の人間になれる気がするから。




「たぶん私ね、無事に新井くんのこと好きになれたみたい」




 午前2時49分。
 着信53件。メールは・・・知らん。
 お父さん、お母さん、お兄ちゃん。
 あぁ、やっぱり私って愛されてるんだと、つくづく実感する。
 でも。



「新井くんのこと好きになれたから・・・こうやって服、脱いだってだけで、べつに」



 肩越しに天井が揺れて見える。
 新井くんの前髪が汗で濡れている。




「エッチなことが大好きってわけじゃあないんだよ・・・わかる?」



 
 はぁっ。
 大きく息を吐いて、新井くんが動きを止める。
 私の顎の下に額をつけ、じっとしている。
 繋がったところが脈打っている。
 本日2回目。
 けど、すぐに新井くんは真剣な顔で私を見上げて、私のおっぱいを掴んで、何度か下手くそなキスをしてから、もう一度腰を動かし始める。



「でも・・・・嫌いでもないんだよ・・・わかる・・・?」




 あぁ・・・。あらいくんの・・・きもちいい。




 語尾は揺れる天井に消えた。
 私の言葉に答えるかのように、動きは加速する一方。
 だからまだ、帰れない。
 だってまだ新井くんは・・・ううん。
 



 私も。
 まだ、満足し終わってないから。


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