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 その腕で壊して 
第1章  
 汗でべたついてる大きい背中に目いっぱい腕を回す。
 奥の奥まで、新井くんが入ってくる。
 新井くんの全身のエネルギーがそこに集中してるみたいに、強く。
 繰り返すたび、私の頭は真っ白になって、全身がざわついていく。
 髪の毛の一本一本まで生きてるって分かる。
 キスされると、私が私じゃなくなる。
 一人じゃなんにもできないつまんない私が、誰かに必要とされる私になる。
 この瞬間が、好き。
 全身全霊、私の存在を求められる、この瞬間が。




 ―――俺が求めたときは、必ず相手をすること。それは、俺の女になった以上、どんなときでも義務として果たすこと。・・・いいね?




 いつの日か、新井くんでない誰かの腕の中で聞いたセリフを思い出す、この瞬間が。





「山岸さん、まじすげぇよ」



 
 先ほど述べた私の発言に対する返答なのか、はたまたただ言いたかったから言っただけなのか、詳細は不明ではあるものの、新井くんは私の上で腰を振りながらそんなことを言った。




「え?」




 聞き返したタイミングで新井くんが「ああーっ」と、苦しそうに呻いた。




「山岸さんのなか、すっげーぬるぬるでキッツイの。なんだこれ。気持ちよすぎてやばい」





 さっきまで童貞だったはずの新井くんの動きに、私も翻弄されている。



 クラスでは“ふつうの生徒”で通ってる新井くん。
 “地味な生徒”で通っている私。
 バレたらやばいのはきっと、新井くんのほう。



 絶対秘密だよ?の口約束で、新井くんに身体を許した。
 交際開始2時間・・・いや?3時間?いやもう、どうだっていい。


 秘密は不本意ながら右肩上がりで増えていく一方。
 繋がったままキスして、新井くんの口の中を舐める。
 唇を離すと、新井くんが苦しそうな声で言った。 



「ああ、山岸さん!好きだ!」


 
 きつく抱きしめられる。
 またケータイが震える。
 それは、新井くんがまた私の中で果てるまで続いた。



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