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瞳で抱きしめて
第1章 家出?
帰りたくない。



そう言ったっきり無言になってしまった少年を眺めて、樹理はさてどうしたものかと考えた。



制服は泥だらけ。顔は傷だらけ。


そして帰りたくない。



いかにも複雑な理由がありそうな様子だった。



「家出したの?」



「えっ?……いや、違います…違うけど、帰りたくないんです…今は」



今は…。

そう、今帰っても母は飛行機の距離の祖母宅へ行っていていない。

帰ってくるのは来月末だろう。


それまで深夜にしかいないとはいえ、父親と同じ家に帰る気分にはならなかった。



「じゃあうちに来る?」



「え?」



さらりと提案した樹理の言葉に、光はグレーの瞳を上げた。
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