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3つのジムノペディ
第3章   レント(ゆっくり)で、いたましげに


彼女は30歳になろうとしていた。
フィアンセは彼女に結婚を申し込んだようだ。
彼女の指には、まぶしいぐらいのリングが輝いていた。
ディナーの席で彼女はそれを外し、クラッチバッグの中に丁寧にしまった。

ぼく自身にも、人生の大きな転機が訪れている頃だった。
長いフリーランサーの生活から、縁あって、小さな会社のマネジメントに職を移していた。
歳を長じると脱落者が多くなってゆく我々の業界で、知らぬ間にぼく自身のキャリアは他を抜きん出るほどになっていた。
決まったクライアントとしか付き合ってこなかったけれど、後進の育成と、自分自身の研鑽を兼ねられる、その席の居心地は決して悪いものではなかった。

そこから与えられる驚くほど多くの収入で、ぼくは彼女に、一粒のダイアモンドのついた、シンプルなネックレスを買った。
誕生日を祝うことはできないが、最後にプレゼントを渡したかった。
彼女はそれをみて、ひと雫だけ、右の目から涙をこぼした。あとは下唇を噛んで、気丈に涙を止めてみせた。
ぼくは彼女の首に両手を回し、ネックレスをつけた。
こぼれた涙は、彼女のデコルテに鈍く輝く宝石になった。

ぼくたちはそして、ゆっくりと厳(おごそ)かに交わった。
彼女の脚をとって、一本一本の指を丁寧にくちづけて。そして、ピンクのペディキュアの塗られた爪を丁寧に舐め、その細い指たちをそっと、吸った。
ベッドにうつぶせた裸の背中。浮き上がる背骨の一つ一つの凹凸に、心を込めてくちづけをした。
手を取り、指の股を舐め、手首に見える青い静脈にそって、舌を這わせていった。
うなじに触れ、耳たぶを甘噛みし、腰のくびれをやさしくさすった。
小ぶりな乳房を口に含み、やわらかく乳首を転がした。
濡れたペニスの先端を、彼女の内腿の素肌にこすりつけて、そのローションの滑りを味わった。
そして、彼女の性器に、触れた。

彼女の呼吸を読み、指先に全身全霊を込めた。
暴力などなくても、人は赦し合えるのだと、伝えたかった。

心の中で、ジムノペディーの3番が流れてくる。
神々への祈りにも似た、静かなセックス。
彼女との、最後のセックス。


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