この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
3つのジムノペディ
第2章   レント(ゆっくり)で、苦しみをもって
都心のど真ん中にあってしかし、付近に電車の駅がないせいで、知る人ぞ知る町であるここは、何故か東京中の粋人があつまってくる。デザイナ、アーティスト、タレント、カメラマン。この町の名前を聞いて人々が思いつくのは、洒落たレストランと深夜営業のダンスクラブだろうけど。
ぼくら地元民には、なじみの寺や焼き鳥屋のある、いつもの町だ。

近所に昔からある八百屋や魚屋の話を、我々はした。
「オーケー商店の野菜。アレはやめたほうがいいよ。鮮度悪いよ。オヤジは面白いけどね」
「味噌谷の魚屋は時々はっとするほど新鮮な魚おいてますよね?」

ぼくはこの年上の彼の、都会人ぶらないところが気に入った。東京ズレしていないところが、とても好感が持てた。
我々はあえて、仕事の話を会話の遡上(そじょう)にあげなかった。そういう下世話な話題で、この偶然のひと時を台無しにしてしまいそうな気がした。
だから、この町の話、をずっと続けた。
昔、まだ都電が走ってた頃。台風が来て、床下浸水があった頃。笄川(こうがいがわ)がまだ暗渠(あんきょ)でなかった頃。この町に住んでまだ10年のぼくは、彼の鮮やかな昔話に引き込まれていた。

「ご結婚は?」と何気なく振った言葉に、この年上の彼は微苦笑して、「ホモセクシュアルなんですよ」と告げた。
ぼくは、その時、どんな顔をしていたのだろう?

この都会で長く暮らせば、ホモセクシュアルの人と話す機会もあった。ぼく自身はそれに対して否定も肯定もしないけれど、自然にそう言える彼と向かい合うと、その事実をスルリと受け入れることができた。

「あなたは?」と、彼がきく。
ぼくは一瞬、返答に窮(きゅう)した。
彼はにっこり笑って「違いますよ」、と。
「ホモかどうかなんて、そんなのは見れば判ります。ご結婚、されてるかどうかですよ」

笑って言うその言葉に、ぼく自身どこかで身を固くしていたことを意識した。彼のサラリとした態度は、とても粋で、スマートに見えた。ぼくはこの年上の知人に、憧れ始めていた。

/18ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ