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その恋受け取ります
第5章 事件勃発!
「じゃ、出発します」
シートベルトを締め終らないうちに車は動き出した。
号令のような悠月の一言に、はい、と返事をした後の未和は、
緊張で何も言葉が出てこなかった。
のどがカラカラしてきたのがきっかけになり、
缶コーヒーを買っておいたことを思いだした。
信号で止まったタイミングで、悠月に声をかける。
「あの、どうぞ」
チラッと視線を向けた悠月は、ありがと、と差し出された缶コーヒーを掴んだ。
未和の手ごと。
その時の衝撃と手の温もりに全身を固めている間に、悠月は缶を開けた。
甘ったるい缶コーヒー独特の香りが車内いっぱいにひろがっていく。
「あ、もしかしてブラックのほうがよかったですか?」
香りに気づかされた時にはもう遅いが、
なんとか言葉を見つけられた安心感から思わず口をついて出てしまった。
「ううん、オレ甘いコーヒー好きだから」
車のスピードに合わせて吹き込む窓からの風に目を細めながら、
悠月は前を向いたまま笑顔を作っていた。
その横顔を見つめていたら、また無言になってしまった。