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愛し愛され
第4章 ペチカ燃えろよお話しましょ

博人。
あの日、あの人と路面電車に乗って、旧市街の外れの小さな可愛らしいホテルに行った。クルマではなく、路面電車というのもなかなか趣があったし、街の寒さともよく調和していた。
そこで博人を見た。
若い、とても美人の女性と一緒だった。腕を組んで、肩を寄せ合い、路面電車のホームに立っているふたりを見れば、彼らがたったいままでセックスをしていたことは一目瞭然だった。彼女は揺られる電車の中でそれに気づき、そして気持ちが切り替わるのを意識した。まるで、ホームに近づいていく路面電車のレールが切り替えられ、いままでと別のレーンに車両がするりと移動するみたいな気分だった。
時々、何ということのないメイルを送ってきては、彼女の機嫌を伺う博人。
言外に、「忘れていないよ」とサインを送られていたのは判っていた。その面目をつぶさず、さりとて必要以上にこちらへなびかせぬよう注意を払いながら、気まぐれにメールを返した。
近づきすぎず、踏み込まない距離を保ちつつ、彼は上手にさほ子の意識の外縁にとどまり続けた。
あの人との時間を重ねるたびにしかし、彼女はそのまぶたの縁にとどまり続ける博人のことが、いささか億劫になってきていた。その存在に「執着」というニュアンスが見え始めたからだ。もっとカラリとした、気持ちよく乾いた関係であったはずなのに。どうしたことだろう?
そしてあの日。
美人のガールフレンドと一緒の彼を見たときに、彼女は気づく。
そうか、そうだったのか、と。

