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愛し愛され
第5章 彼女、となったひと




出逢ったばかりの頃、博人は彼女を運命の女だと信じた。その立ち振る舞い、美しい容姿、そしてなによりも、他の誰とも似ていないその人間性に、深く感銘した。彼女には、夫と子どもがいることは知っていた。しかも婚外に恋人がおり、その付き合いが深いことは、出逢ってから彼女に聞いた。

でも、それが何かの諦めになることは全くなかった。

こんなにも深く、人は片想いというものができるのだ、と彼女と知り合ってはじめて、彼は知った。



辛かった。

彼女が振り向いてくれないことが、ではない。

そんな博人の気持ちをすべて知った上でなお、彼女の気まぐれで微笑まれることが、だ。けれどもそんな気まぐれが、彼女の何よりの美徳なのだ。どうして恨むことなどできよう?

腹を据えて落ちた恋だ、と博人は思った。振り向いてくれないことぐらい、どうということはない。しかしいっそ、高校生の恋のように、遠くから見守るだけだったらどれだけ気軽だろう。だが彼らは、時々会い、食事をし、挨拶をかわすような気軽さで、常に彼は恋する気持ちを伝えた。迷惑がられない頻度でメイルを送り、つかず離れずの距離を保ち続けた。


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