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愛し愛され
第5章 彼女、となったひと

その間、彼はふたりの女性と付き合った。
不実な恋だと言われるかもしれない。しかし、あまりにリアルを超越している彼女という存在は、博人の魂を焼きつかせてしまいそうだった。理想が形になって現れたのではない。彼女という存在が、知れば知るほど、理想の形になっていったのだ。
太陽に近づこうとしてギリシア神話の青年は、蝋でできた羽根をつけて空高く飛び、やがて羽根を溶かして地に堕ちた。彼女という熱源は、博人にとってはその太陽そのものだった。だからその熱源から目をそらすために、彼には別の女性が必要だった。
やがて子どもの遊びのようにせわしなく季節が入れ替わり、日が出て日が沈み、海は満ち引きを繰り返した。すべては彼女の気まぐれを誘うための舞台装置のように、今の博人には思えた。
あの日、彼女が博人を誘ったのは、間違いなく彼女一流の気まぐれだったはずだ。あるいは一度彼と寝て決着をつけ、彼を遠ざけようとしたのかもしれない。
いずれにせよ、食事の後にホテルに誘い、ベッドへ導いたのは博人自身だ。しかしそれは、彼女の思惑を行動にしただけに過ぎない。そのとき彼は、完全に常軌を逸していた。いまでも彼女に何を喋ったのか、よく思い出せない。そして博人のペニスは勃起しなかった。
彼女の身体は、何度も想像したのとまったくズレなく、素晴らしいものだったにもかかわらず、だ。

