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愛し愛され
第6章 ダイニングテーブルのシャボン玉


コール二回で博人が出た。

「こんにちは。わたしです」とさほ子はいった。

「久しぶり」と、にこやかな声が返ってきた。

いま、大丈夫?、平気だよ、という月並みなやり取りの後、さほ子はすぐに本題に入った。

「ねぇ?」と彼女は言った。ちいさな気持ちの苛立ちが、声に出ないといいな、とさほ子は思った。「わたし、間違いメイルなんてしてないわ」

「え?」

「あなたに向けて、ちゃんと送信してるのよ」

「あ、」といったきり、電話の向こうは言葉に詰まった。

さほ子はたたみかけるように言った。「あなたに会いたいから、そうメイルしたの。この間の時だって、そうなのよ」

電話の向こうからの明確な応答がなかった。

さほ子は不安になった。

セックスの時に、相手のペニスが硬くならないという事態の経験のなかったさほ子だが、それと同様に、自分からアプローチした相手から、戸惑いのリアクションを得たこともまた、あまり経験がなかった。彼女は、次に何を言えばいいのかが、わからない自分に気づいた。居丈高なテレビドラマの悪女のように、逆上して罵(ののし)りの言葉をよどみなく吐き出すべきなのか。それとも、ぽろぽろと涙をこぼしながら、相手の気持ちが醒めてしまったことをなじるべきなのか。どちらもすこしも自分らしくない、と彼女はその場で結論した。ではいったい、自分らしい反応とはどういったものであるのか。その答えの持ち合わせがないまま、さほ子もまた、沈黙せざるを得なかった。

「あー、あの、ね」

沈黙を、電話の相手が破った。

「もう、呆れられちゃったんだと思ってさ」あはは、と乾いた笑いをこぼしながら、彼は言う。「まさか二度と会ってもらえるなんて、考えてなかったよ」

「どうして?」

さほ子は、そういった自分の声が、ひどくしわがれていたことに、自分で驚いていた。

「どうしてそう思うの?」

「うむむ」と博人の困惑した声が聞こえた。自分が何か、ヘマをしたのだ、という意識だけがさほ子にあった。どうも、どう振舞えばいいのかがよく判らない。

「ごめんなさい」と彼女は自然に、そう、口にした。「ごめん。あたし、うまく言えないけど。会いたいの。あなたに」

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