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愛し愛され
第6章 ダイニングテーブルのシャボン玉

その言葉を受話器の向こうに聞いて、博人もひどく混乱した。

いったい何が起こっているのかがよく理解できなかった。しかし、それよりも、あのさほ子がすこし取り乱し、緊張していることに気づいた。その原因が自分にあるのか、彼女の中にあるのかわからなかったけれど、親切な彼は、とにかく彼女を落ち着かせたかった。

「あぁ。うん。こちらこそ、勘違いをしていたようで、ごめん。

 この間の一件で、すっかり愛想をつかされてしまったと思っていたんだよ。うん。そう」

電話の向こうから、特に相槌(あいづち)はなかった。

「だから、あなたからそんな風に言われるなんて考えられなくって。それで、混乱しちゃったんだ。こちらこそ、ごめん」

「うん」

「会ってくれるの?」

「うん。会いたいの」

「わかった。ちょっと予定を調整する」

そういうと、電話の向こうでさほ子が安堵している気配がした。
―――かつてなら。今までだったら、さほ子が仮にそんな風に会いたがったらば、博人はすべての予定を差し置いて、まずは会う約束をしただろう。しかし今は、本能的に一拍おくことを選んだ。嘘をつくつもりなのではなく、自然に、そう言った。

安心したさほ子が、希望の日時を言うのを、彼は自動的に手近のメモ用紙に書きとめ、そして電話を切った。



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