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愛し愛され
第7章 夕暮れのくちづけ

「いまでも、あたしとセックス、したい?」
その言葉は博人の胃を、きゅっと縮こまらせた。
その言葉からは、さほ子の気持ちを図りかねた。あの頃だったらそれが、誘惑なのかジョークなのか、すぐにでもわかったのに。そして間髪入れずに気の効いた返事を繰り出せたというのに。
彼女の、さほ子の目を見てはいけない、と思った。
ノォ、という、自分の答えが透けて出てしまうような自分の目を、顔を、彼女には見せられないと思った。
それは、その気持ちを隠したいという自分の都合でなく、彼女を傷つけまいとする優しさから出た言葉だ。
傷つけまい?
博人は瞬間、自問する。
ということは、さほ子のその問いは、ジョークでなく、シリアスな問いだというのか?
そうだとするなら、なおのこと、自分はなんと答える? 直感が導き出した結論を、理性がなぞってゆく。そう、それは…。
「それは、」と博人は口を開く。金色に輝く海を見たまま。そのまま、言葉が12月の空に消えた。

