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Beautiful Smile~不器用な愛~
第4章 出逢
「俺は、奥さんのことも子どものことも無条件に愛してるから裏切ったりせえへんで。それに、君も自分のこと大切にしぃや」
「っ……」
「もうすぐ終電だから、早く帰らなアカンで」
男は羽織っていた汚れたパーカーを私の肩にかけると去って行った。
「っ……ふぅっ…」
次から次へと涙が溢れてくる。私のことを横目にチラッと見るだけで通り過ぎていく人並み。そんな中で私に目を留めてくれたあの人。胸の奥底のほうに温かいモノが広がった気がした。鞄の中でぐしゃぐしゃになったお札を見て、本当は一体これに、痩せることになんの価値があるんだろうか。
私はフラフラと立ち上がって、駅のトイレの個室に入る。
――ツゥ。
ポケットに常備しているカッターナイフで新しい傷を作った。価値などなくてもいい。それでも私は生きているのだ。
逃した終電。ケンジに迎えに来てもらって、家に帰った。
「だから……いつでも入っていいって言ってるのに」
家のドアノブには、遠慮がちにビニール袋がかかっていた。透からだ。