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Beautiful Smile~不器用な愛~
第2章 彼奴
***
玄関のチャイムが鳴る。扉の向こうから遠慮がちな声が聞こえる。
「ミキさん」
私は自分の名前が大嫌いだ。美しい姫と書いて美姫。正式な書類以外は、自分の名前は漢字では書かない。片仮名でミキ。
私のことをミキさんなんて呼ぶのは、アイツしかいない。須崎透(スザキ トオル)。透は、中学一年生の時に不登校になった。私の家が同じマンションだというだけで、プリントを毎日渡しに行っていた。一生学校に来ないのかと思いきや、三ヶ月ほどでクラスに現れた。再び登校してきた透はやっぱり他の男子にからかわれていて……。
「ばっかじゃないの?」
「はぁ?!」
ウジウジしている透にも男子にもイライラした私は、男子と殴り合いの喧嘩をして、親や先生にこっぴどく叱られた。
透は転校していった女を今でも想っている。彼女から貰った詩を今でも大切に部屋に飾っている。私からしたら、透を助けなかった彼女も同罪だと思っているのだが……。
その一件から、今度は私がやられるようになったけれど、別にどうでもいい。くだらないと思って、見下していた。