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Beautiful Smile~不器用な愛~
第9章 別涙
***
家に帰るとLINEで連絡を取り合っていた為、ケンジの車がマンションの前にあった。
「お待たせ」
「いや、こっちこそごめん」
私はケンジの車に乗る。ピリピリとした車内。嫌な空気が流れる。
「……彼女ができた」
「そう」
「ごめん、だから今の関係を終わりにしよう」
こんな関係が続いて上手く行くのは小説や物語の中だけだとそんなこと分かっていたつもりだった。コイツはただのセフレだった。それ以外の何者でもない。そう思っていたのに、いざ終わりにしようも言われると胸の奥がチクリと痛む。
それでも確かに優しさはいつもあって、愛は確かにそこにあった。けれど、それは一時の幻、幻想でしかなかった。分かっていたはずなのに、洪水のように、津波のように押し寄せてくるこの気持ちはなんだろう。