この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
口琴
第11章 知られざる過去
一夜が明ける。

蕾の熱も、聖の看病の甲斐あってか、長引かずにすんだ。
聖は、キッチンで朝食の準備。と言っても、シリアルにミルクを注ぐだけ。

「おはよ…」

「あ、あぁ…」

夕べの事が少し照れ臭く、二人は中々目を合わせられない。

「朝メシ、シリアルでいいか?」

「うん。ありがとう…」

「あ、そうだ。服、洗濯しといた。そのソファの上」

「あ、ありがとう…じゃあ…着替えてくるね。顔…洗ってきてもいい?…」

「ああ、勝手に使っていいから」

ぎこちないやり取りが交わされる。

テーブルに着いて、沈黙の朝食が始まった。

「…あの…」

「…なあ…」

二人の言葉が重なる。

蕾は小首を傾げ、聖にニッコリ微笑んだ。

蕾に促され、聖が話し始める。

「その…俺は…本気だから…」

「……?……」

「…何もできねぇかも知んねぇけど…俺にできる事は、何でもする。…それから…ずっと、そばにいるから。…信じてろ…」

「…うん…うん…」

聖の力強く優しさに溢れた言葉は、蕾の長い睫毛を濡らす。

「…で?」

「……?……」

「…お前の話は?」

「私、聖君が好き。ずっと一緒にいたい。でも…」

「…でも?」

「…本当の私を知ったら…」

「本当の私って?」

「…聖君…私の事、嫌いになるかも…」

聖の脳裏に、昨日の蕾の言葉が渦巻く。

『酷いこと…』『私は、お金…』

「…蕾は、蕾だ」

「…うん…」

胸が熱い。

「なあ、ハーモニカ吹くから、歌えよ」

「ほんと?歌うっ!嬉しいっ!」

涙を拭った蕾に、満面の笑みが零れる。

蕾の笑顔は、木漏れ日のように柔らかで、聖はこの笑顔をずっと、見ていたいと思った。

たとえ、この少女の"本当"を知っても…。

しかし、今の自分にできる事と言えば、ハーモニカを吹く事くらいしかない。聖は内心、自分がまだ非力な子どもであることをもどかしく思った。

聖がテーブルに、重厚な黒いケースを置いた。

パチンと蓋を開けると、銀に輝く美しいハーモニカが、その身を横たえていた。

それはまるで宝石のように。

いつも、手軽にポケットから取り出して吹いていたものとは思えない。

「夕べ、蕾が眠った後、磨いて手入れしておいたんだ」

「素敵ね…とっても綺麗!」

「大切にしてるんだ」
/222ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ