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口琴
第11章 知られざる過去
一夜が明ける。
蕾の熱も、聖の看病の甲斐あってか、長引かずにすんだ。
聖は、キッチンで朝食の準備。と言っても、シリアルにミルクを注ぐだけ。
「おはよ…」
「あ、あぁ…」
夕べの事が少し照れ臭く、二人は中々目を合わせられない。
「朝メシ、シリアルでいいか?」
「うん。ありがとう…」
「あ、そうだ。服、洗濯しといた。そのソファの上」
「あ、ありがとう…じゃあ…着替えてくるね。顔…洗ってきてもいい?…」
「ああ、勝手に使っていいから」
ぎこちないやり取りが交わされる。
テーブルに着いて、沈黙の朝食が始まった。
「…あの…」
「…なあ…」
二人の言葉が重なる。
蕾は小首を傾げ、聖にニッコリ微笑んだ。
蕾に促され、聖が話し始める。
「その…俺は…本気だから…」
「……?……」
「…何もできねぇかも知んねぇけど…俺にできる事は、何でもする。…それから…ずっと、そばにいるから。…信じてろ…」
「…うん…うん…」
聖の力強く優しさに溢れた言葉は、蕾の長い睫毛を濡らす。
「…で?」
「……?……」
「…お前の話は?」
「私、聖君が好き。ずっと一緒にいたい。でも…」
「…でも?」
「…本当の私を知ったら…」
「本当の私って?」
「…聖君…私の事、嫌いになるかも…」
聖の脳裏に、昨日の蕾の言葉が渦巻く。
『酷いこと…』『私は、お金…』
「…蕾は、蕾だ」
「…うん…」
胸が熱い。
「なあ、ハーモニカ吹くから、歌えよ」
「ほんと?歌うっ!嬉しいっ!」
涙を拭った蕾に、満面の笑みが零れる。
蕾の笑顔は、木漏れ日のように柔らかで、聖はこの笑顔をずっと、見ていたいと思った。
たとえ、この少女の"本当"を知っても…。
しかし、今の自分にできる事と言えば、ハーモニカを吹く事くらいしかない。聖は内心、自分がまだ非力な子どもであることをもどかしく思った。
聖がテーブルに、重厚な黒いケースを置いた。
パチンと蓋を開けると、銀に輝く美しいハーモニカが、その身を横たえていた。
それはまるで宝石のように。
いつも、手軽にポケットから取り出して吹いていたものとは思えない。
「夕べ、蕾が眠った後、磨いて手入れしておいたんだ」
「素敵ね…とっても綺麗!」
「大切にしてるんだ」
蕾の熱も、聖の看病の甲斐あってか、長引かずにすんだ。
聖は、キッチンで朝食の準備。と言っても、シリアルにミルクを注ぐだけ。
「おはよ…」
「あ、あぁ…」
夕べの事が少し照れ臭く、二人は中々目を合わせられない。
「朝メシ、シリアルでいいか?」
「うん。ありがとう…」
「あ、そうだ。服、洗濯しといた。そのソファの上」
「あ、ありがとう…じゃあ…着替えてくるね。顔…洗ってきてもいい?…」
「ああ、勝手に使っていいから」
ぎこちないやり取りが交わされる。
テーブルに着いて、沈黙の朝食が始まった。
「…あの…」
「…なあ…」
二人の言葉が重なる。
蕾は小首を傾げ、聖にニッコリ微笑んだ。
蕾に促され、聖が話し始める。
「その…俺は…本気だから…」
「……?……」
「…何もできねぇかも知んねぇけど…俺にできる事は、何でもする。…それから…ずっと、そばにいるから。…信じてろ…」
「…うん…うん…」
聖の力強く優しさに溢れた言葉は、蕾の長い睫毛を濡らす。
「…で?」
「……?……」
「…お前の話は?」
「私、聖君が好き。ずっと一緒にいたい。でも…」
「…でも?」
「…本当の私を知ったら…」
「本当の私って?」
「…聖君…私の事、嫌いになるかも…」
聖の脳裏に、昨日の蕾の言葉が渦巻く。
『酷いこと…』『私は、お金…』
「…蕾は、蕾だ」
「…うん…」
胸が熱い。
「なあ、ハーモニカ吹くから、歌えよ」
「ほんと?歌うっ!嬉しいっ!」
涙を拭った蕾に、満面の笑みが零れる。
蕾の笑顔は、木漏れ日のように柔らかで、聖はこの笑顔をずっと、見ていたいと思った。
たとえ、この少女の"本当"を知っても…。
しかし、今の自分にできる事と言えば、ハーモニカを吹く事くらいしかない。聖は内心、自分がまだ非力な子どもであることをもどかしく思った。
聖がテーブルに、重厚な黒いケースを置いた。
パチンと蓋を開けると、銀に輝く美しいハーモニカが、その身を横たえていた。
それはまるで宝石のように。
いつも、手軽にポケットから取り出して吹いていたものとは思えない。
「夕べ、蕾が眠った後、磨いて手入れしておいたんだ」
「素敵ね…とっても綺麗!」
「大切にしてるんだ」