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口琴
第11章 知られざる過去
朋香は、項垂れて頭を抱える惣一に駆け寄り、ポロシャツの袖を強く掴んだ。

「惣一さん!どうして止めなかったの?」

「止めたって無駄だろう。あいつは…」

惣一は、ついてもいないテレビをぼんやりと見つめながら、ボソリと呟いた。

自殺だの虐待だの金銭目当ての養子だの、ニュースやドラマでしか聞いたことのないような話が、生々しく身近で起こる事自体が半信半疑で、どうせ取るに足らない親子喧嘩を、子供が大袈裟に言っているのだろうと、少なからず軽視していた事は間違いなかった。

ましてや、あの梨絵にかぎって…。それが何よりの理由だった。

聖も、それを見透かしていたのだろうか…。

「大丈夫だ。腹が減ったらそのうちに帰って来るだろう」

惣一は自分を諭すように、言った。

「…まいったな…梨絵の子に逢うとは…」

「ほんと…。驚いたわ…。梨絵、ダニエルと再婚してたのね?惣一さんと離婚して、オーストリアへ戻ったとは聞いてたけど…。
ダニエル、亡くなったなんて…気の毒だわ…。あの子、ダニエルにそっくりだったわね?…深くて優しい翡翠色の瞳…。でも、梨絵の面影はなかったような…」

「聖は、あの子の事を特別な存在に思っている。まずい…。聖にいつまでも隠せない…。あの子とは、もう付き合わさない方が…」

「…でも、まだ二人とも子どもよ?考え過ぎだわ。そんな恐ろしい事には…ならないわよ…。大丈夫よ…きっと…」

そう言いながらも、朋香も不安の色を隠せない。

「…だといいんだが…あいつも年頃だからな…。やはり止めるべきだったか…」

「惣一さん…?」

惣一は、今更ながら自分の安易で軽率な判断に気付き、腰を上げた。

「…ちょっと見てくる。まだその辺にいるかもしれない」

「…私も!…」

「君は家にいて。帰ってくるかも知れない。帰って来たら、連絡してくれ」

「…ええ。分かったわ…」

一人残された朋香。じっとしていると、良からぬ事を考えてしまう。家事でもして、気を紛らす事にした。

スーツケースを開け、旅行中溜まっていた洗濯をしようと、忙しく動いた。

脱衣所に置かれた洗濯かごに、見慣れない服が入っている。よくよく見ると、見覚えのある服だ。

「ん?聖の小さい頃の服だわ?パンツも…。なんでこんなものが?…え?泊まったの?…」

朋香の背中を、冷たい汗が一筋流れた。
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